儀式


大佐は俺を抱く時、初めに機械鎧にキスを落とす。



血の通わないそれに生命(温かさ)を吹き込むように。

欠けた身体に失った部分を思い出させるように。







「大佐ってそういう性癖?」

大佐の執務室で旅の報告をして、他愛のない世間話をしていたはず。
それが何時の間にか自然に距離が縮まって…

ソファに踏ん反り返るエドの左脚に大佐は布越しに唇を押し当てた。
女王に傅く騎士の様に。

初めは気色が悪くて全力で張り倒していた。
それが毎度毎度仕掛けてくるものだから諦めた…というより不覚にも最近は触れられる事が嫌じゃなくなったというか。
しかも悔しいことに大佐はそういう事も様になっていたりするのだ。

「何が?」
分かっているくせに面白がるような口調で返され腹が立つ。
「機械鎧に感じちゃうタイプ?」
「鋼のはそうなのか?」
「んなわけあるかっ!」
いやに余裕のある態度が癪に障って立ちあがろうとすると、凄い力で右腕を引かれてソファに縫い付けられる。
真上に迫った顔を睨み上げても胡散臭い笑顔で返されるだけだった。
「何すんだよ!!」

「エドワード…」

こんなに近くで滅多に呼ばない名で呼ぶのは卑怯だ。

落ち付かずに視線をさ迷わせているとフッと笑う気配がした。
「私は機械鎧に欲情するたちではないのだがね」
「……」

ゆっくりとした口調でそい言いながら掴んでいた機械鎧をエドの目の前に持ち上げ手袋越しにキスを落とした。
唇はその輪郭を辿るように這っていく。
たまらなくなってギュッと目を瞑るが感覚は余計に冴えてしまって、大佐が歯で手袋を外したのが分かった。


「目を開けなさい」


有無を言わさない命令口調に逃れることができず、恐る恐る瞼を上げた。

硬く冷たい機械鎧の指一本一本を丁寧に這う紅い舌。

神経が繋がっているとはいえ人間の皮膚には遥かに劣るはず。


なのにこのリアルな感覚は何だ?


あり得ない熱と痺れが全身を駆け巡り、息が上がってくる。
視界がぼやけてきたのは生理的に溢れてきた涙のためか……







欲情シテイルノハ俺



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