春うらら
はらはらと舞うように
静かに美しく
ふと目の前を霞める花びらを掴もうとして失敗した
地面に落ちた花びらは何故か哀しい
今度こそ掴もうと見上げて右手を伸ばす
薄桃色の優しい雪はしかし人工の腕を避けるように捕らわれてはくれなかった
「そのまま溶け込んでしまいそうだね、妖精さん」
やんわり重ねられる大きい大人の男の手に現実に引き戻された
「…寒いよあんた」
深々と溜め息をつくと、口説き甲斐のない子だねと溜め息を返された
「桜が好きなのかい?」
「さあ…綺麗だとは思うけど」
「私はそう思わないな。散った後踏み荒らされた花びらは見るに耐えない」
「下ばっか見てると小さい男だと思われるぞ」
「…痛い所をついてくるね」
大袈裟に嘆いてみせる男の胸にコツンと後頭部を預けた
瑚珀の瞳と春宵の瞳がぶつかる
「それよりいつまで手を握ってるんだよ」
抗議しながらも自ら振りほどく事はできない
それを揶愉するように男は形の良い唇の端を上げ指を更に絡めてきた
「君が連れていかれないように私が握ってるんだよ」
そう言って男は左手をエドの首から顎へと滑らせる
急所を触れられたせいか体がぞくりと痺れた
首に負担をかけないようにと軽く触れるだけの口付け
視線が合わさらない分、唇の感触が強烈だ
「君は上を見ていればいい」
この櫻のように清いこの子には大人の醜い部分は見せたくないから
「あんたが散ったら落ちる前に俺がちゃんと拾ってやるよ」
この櫻のように強くも儚い彼だけは汚れてしまう前に受けとめてあげよう
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