GODDESS?



冴えない男に神からのお情け。
無条件で願いを三つ叶えましょう、と美しい天使だか女神だかが現れて…
なんてただれた夢物語の世界だと思っていたが改めねばなるまい。

「願い事を三つ叶えてやる。さっさと言えよおっさん」
もっとこう…憐れみなり慈しみが欲しいと思うのは贅沢だろうか。







有能な部下に脅され…否、励まされて徹夜で書類を片付け漸く許された仮眠。
何があっても起きるものかと意気込んで瞼を閉じる。
意識がふわりと浮くような感覚がしてようやく得られた休息に身体中の力を抜いた時だった。


ずしっ


「うっ!」
無防備な体に重いものが急にのしかかってきて息が止まる。
金縛りか?と思ったが瞼は難無く持ち上がった。

視界目いっぱいに広がる金に一瞬目がくらむ。
目の奥を突く痛みを堪えてその存在を確認する。
自分の上から少年のような力強さと少女のような儚さを合わせ持つ子供が覗き込んでいた。
ちょっとしたホラーなのだが怖いと思わないのはその子供の姿のおかげだろう。
蜂蜜色の髪に琥珀の瞳は絵画で見る天使そのもの。
どうせならもう少し大人な女性だったら良かったのにとなどとぼんやり考えていると
天使は少年とも少女ともつかない透明な声で問うてきた。

「ロイ・マスタング。29歳。男。独身。職業は軍人で階級は大佐。焔の錬金術師…間違いはないか?」
淡々と事務的な口調に思わず素直に「はい」と答える。
天使は一つ溜め息をつくと尊大に先の事を言ってきたのである。



願い事は人から問われるととっさには思い浮かばないものである。
願い事が多すぎて、もしくは人に叶えてもらう等考えもしなかったか…ロイは後者だ。
「金か?名誉か?女か?」
「…私はそんな俗物に見えるかね」
「欲しくないのか?」
意外だと言わんばかりの顔をされると流石に切ない。
もちろん欲しいに決まっているが「私には私なりのプランがあってね。
まあそう易々と手に入るようでは欲しいとも思わなくなりそうだ」

「変なやつー」

みも蓋もない言い方をしてくれる。
「とりあえず何でもいいから欲しいもん言えよ」
「何でもねえ…」
「あ!でも願いの数を増やせってのは駄目だかんな。
あと…死んだ人間を生き返らせて欲しいというのも駄目だ」
天使は何故か切なそうにそう付け加えた。

「ふむ。やはりそれは神の領域かね。天使でもそこまでは許されてないんだね」
「…ちょっと待て…あんた今何て言った?」
「神の領域」
「違う!そのあと」
「天使でも…」
「誰が?」
「君が」

一瞬の静寂。
「ぶっ!あははははっ!!」
豪快な笑い声を出して天使は腹を抱えている。
眦に涙まで溜めて笑う姿は子供らしい幼さを際立てた。

「はっ…苦しっ!!あんた天使なんていると思ってんのか?」
「君がそうなら信じても良いかなと思ったところだ」
「冗談!神も信じてないくせに」
「神はいるのかね」
「いない。この世にあるのは真理だけだ。あんたらはそれを神と呼ぶのかもしれないが」

「君は何者だい?」


「天使じゃないとは言えるよ。俺が何者かを知る事はあんたの人生じゃ意味のない事だ。
俺はただ【賢者の石】があんたを選んだからここにいる」


「賢者の石…ね」
ロイも聞いたことがある。
この世の法則を無視して不可能を可能にしてしまう魔法の石。
この子が言うようにはまるでそれは生き物のようだ。
「さあさあ!願い事を言って」
急かす子供は早くここから去りたいらしい。

『賢者の石』に興味があった。
そしてこの子供と別れるのが少し惜しい気がした。

「決めた」
「おう!やっぱり女か?」
……そんなに飢えているように見えるのだろうか。

「君だ」


「何だ俺か…っておい!!」


冗談じゃない、取り消せと喚く子供を腕に封じて眠りに落ちた。
面白いものが手に入ったと子供のような笑みを知るものは一人しかいない。

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