可愛いお隣さん
レノア・ザラは息子を愛していた。
自分に良く似た容貌で性格も優しい。
頭も良い。
何処へ出しても恥ずかしくない子である。
しかし厳格な夫に教育されたせいか、少し可愛さに欠けるのである。
見た目は十分に可愛い。
ただ内面的な幼さがもっと欲しい。
贅沢と人は言うだろう。
しかし母親としてはもっと子供らしく甘えて欲しい。
黙々と科学書を読む息子を横目に見てそっと溜め息をついた。
ピンポーン…
来客を告げる音にはっと我に返る。
平日の昼間から…セールスの可能性が高いからあまり出たくないと考えていると
ピンポンピンポンピンポーン!!
急かすようにチャイムが鳴り驚いて玄関へ向かった。
息子も心配したのか後をついてくる。
「はいはい」
怒りを笑顔に押し込めてガチャと扉を開けた。
例え強盗だとしても氷つきそうな笑顔である。
「あっ!す、すみません!!」
顔を真っ赤にしたスタイルの良い女性が腕に子供を抱えたまま頭を下げた。
「や〜もっとおすの!」
「キラ!」
どうやらあのけたたましいチャイムは子供の仕業らしい。
「本当に申し訳ありません」
母親が改めてふかぶかと頭を下げると子供も悪いと思ったのか、
瞳をウルウルさせて「ごめんなさい」と小さな声で言った。
母親は苦笑しながらも小さな頭を撫でてやると子供は恥ずかしそうに母親の肩にしがみつく。
レノアは求めていたものを見つけた気がした。
「私今日お隣に越してきましたフラガと申します。本日はご挨拶に伺ったのですが」
「まあ!それはご丁寧にどうも。ふふ、可愛らしいお子さんですね」
「ありがとうございます。ほら、キラもご挨拶して」
キラはチラリとこちらを伺いすぐに顔を隠してしまった。
「すみません。人見知りの激しい子でして」
反応が息子と比べて新鮮で面白い。
レノアは後ろの息子を呼び寄せて紹介した。
「うちの息子のアスランです。キラ君とお友達になれるかしら」
フラガ夫人はキラを抱えたまましゃがみこんでアスランと目線を同じくする。
「初めましてアスラン君。キラのお友達になってあげてね。アスラン君はいくつ?」
「はい。2歳と10ヶ月になります」
「…しっかりしているのね」
そうでしょうとも。
レノアも子供たちの目線に合わせていまだ後ろを向いたままのキラに優しく問掛ける。
「キラ君はいくつかしら?」
キラは照れくさそうに、しかしすこし誇らしげに小さな紅葉の手を出した。
「みっつ」
アスランより年上なことが嬉しかったのか、キラは警戒心を解いて笑顔を見せた。
しかし指は二つのままである。
天使が射た矢が突き刺さるとこんな感じだろうか。
レノア・ザラはお隣のキラ君をとてもとても大好きになった。
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