幼児言葉
あいうえお
かきくけこ…
言葉の教育は難しい。
「『す』が言えないのよ」
「は?」
頬に手を当てて、深刻そうに顔を曇らせているマリューに対して
フラガはポカンと口を開けて間抜けに答えた。
穏やかな休日。
のんびり新聞を読むムウの正面で一生懸命に言葉を覚えようとするキラに目を細めたところだった。
「キラがね、うまく『す』が言えなくてから笑われちゃったの」
「何ぃ!?キラをいじめるなんて何処のどいつだ!」
「落ち着いて頂戴。いじめられたとかそういうんじゃなくて『おかしいね』と言われただけなのよ」
「そこがキラの可愛いとこなのに…分からんとは子供だな」
「まあ一応子供ね。アスラン君の場合悪意があったわけではないと思うけど」
「…あのしっかりした子か」
「私たちは気付かなかったけど、流石に名前だからね…」
さししゅしぇしょ
…あぁ、なるほど。
さ行を聞いて納得しているムウにキラは気付いて練習を止めた。
「キラ…おかしいのぉ?」
悔し泣きかキラがうるんだ瞳でムウを見上げた。
可愛い子の泣き顔がまた可愛いと思ってしまうなんて父親失格かもしれないが…
やはりキラは可愛い(重症)。
「キラはおかしくないぞ!おかしいのは(この可愛さが分からない)アスランの方だ!」
「!!アシュランをわるくいっちゃだめ〜」
即座にアスランをかばうキラにショックを隠しきれないムウ。
マリューはおかしくて吹き出してしまった。
「いいかキラ。パパの口をよく見てゆっくり言ってみろ」
「うん」
「すずめ」
「す・ず・め」
「スイカ」
「ス・イ・カ」
…良い調子だ。
「アスラン」
「アシュラン!」
「…アスラン」
「アシュ…う?」
「ア・ス・ラ・ン」
「アチュラン」
「…」
悪化している。
アシュ…あしゅ…と涙汲みながら練習する息子はとてつもなく可愛い。
いっそのこと『アシュラン』に改名してしまえ!と本気で考えた。
しかしキラが『アスラン』と言えるまでそう時間はかからなかった。
家で四六時中『アシュラン』を連呼されムウはアスランを呪った。
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