チェンジ番外編2 





「え!ラクス休みなの?」


教室にラクスの姿が無いことに気付いたキラがホームルームの後、 アスランに尋ねてくるのでラクスは今日から休みをとっている事を教えた。
何処か具合いが悪いのだろうかと心配してキラは顔を曇らせる。
「シーゲル様について地球へ降りる……って昨日聞かなかったかい?」
「え!あ、うん。そうだったな。忘れてた」
慌ててキラが取り繕うとアスランは眉間に皺を寄せた。
可哀想だと思いながらも仕掛けた罠にキラはまんまとはまってしまった。
意外にあっさりボロを出したキラにアスランは却って心配になる。


「嘘だよ。ラクスはカガリに休む事を言っていない。君は『キラ』なんだろ」



淡々と告げられた言葉にキラは絶句する。

何時から気付いていたのか。
何故『キラ』という名を知っているのか。
どう誤魔化したらいいか…。


予期せぬ人物に見破られてキラの頭は混乱し青ざめた。
その様がアスランを確信させた。
キラは半泣き状態だ。
大きな瞳が輝きを増して哀れさを誘う。
女の子の涙は苦手だ。
どうしていいか分からず、もの凄い罪悪感に苛まれる。
しかし、キラの場合は心が痛むというより何とかしてやりたいという気持ちが勝る。



「仕方ないね…」

溜め息混じりに発せられた言葉にキラは耳を疑った。
顔を上げると、アスランは怒ってるでもなく困ってるようでもない笑みを浮かべていた。
「黙っていてくれるの?」
「下手に騒ぎになるのは面倒だからね。ただし、今回だけだよ」


「ありがとうっ!アスラン!!」

パアァと花のような笑顔を咲かせ、感極まってアスランの手を握るキラにアスランの鼓動は跳ね上がった。
常識的に考えて止めさせなければならないのだが、出てきた言葉はその逆。
頭が固いとニコルにまで言われるアスランにとっては予想外のことだ。
しかし、子犬のように喜びを露わにするキラを見てアスランの心は雪が解けていくような感じだった。




それからキラはあからさまにアスランに懐いてきた。
元々甘えん坊のキラと兄気質のアスランである。
キラの正体が周囲にばれそうになってもアスランがフォローした。
キラは優秀だが何処か抜けている。
大人しいかと思えば、アスランの方が焦ってしまうくらい大胆な事をやってのける。
実際、こうしてまた入れ替わるなんて事をやるくらいだ。
姿を偽ってもなお隠すことのできないキラの可憐さとのギャップがおかしかった。


教室の移動中、中庭に巣から落ちた緑色の小鳥を見付けた。
誰も気付かないくらい小さな救いを求める声に気付いたキラは迷わず駆け寄る。
「かわいそうに…」
まだ羽も生えそろっていない小鳥を両手で掬い上げて悲しそうに眉根を寄せた。
小鳥もキラが危害を加える者ではないと分かったのか、怯えるでもなくその手に収まった。
後から追いかけてきたアスランはキラの優しさに目を細めたのだが…

「よしっ!」

気合いを入れる声がしたかと思うとキラは木の枝に手をかけ、昇る体勢ではないか。
「こら!!」
慌ててキラの肩を掴むとキラは邪魔されて不満そうだ。
「戻してあげるんだよ?」
「それは分かる。だが、女の子がそんな事したらダメだろう」
「えー!何で??僕、木登り得意だよ」
「いやだから、そういう問題じゃなくて」
仮にも今、スカートをはいているのだからもっと気をつかうべきではないだろうか。
納得いかないと言ったふうのキラにアスランは脱力する。

「…かして。俺が戻すから」

あまり人に頼ってくる女も苦手だが、こういうことは頼ってくれてもいいと思う。
不承不承、小鳥を渡すキラに気付かれないように溜息をついた。
アスランの手に渡った途端、暴れて指をつつく小鳥にやるせなさを覚える。



結果的に二人して授業には遅刻。
先生の小言を食らってしまった。
今までそういう事がなかったアスランに皆驚いた。

そして、カガリが今度はアスランと親密になっているという噂は瞬く間に広がった。
その噂は勿論、キラが知られたくない人物の耳にも届くことになる。


ブラウザの戻るをご利用下さい。