ぬくもり
「お前は冬のようだ」
誰だったか、自分のことをそう称したやつがいた。
冷たい、と言いたかったのだろう。
だが生憎と冬の寒さは好きになれなかった。
ひんやりとした空気は気をひきしめてくれるが、朝はどうにも堪える。
あぁ、もう起きなければ…
朝の光は射さないが、訓練しているせいか体内時計は正確だ。
身じろぎを取ろうとするが何かに押さえられていて適わなかった。
(金縛りというやつか?)
初めての体験に他人事のように考える。
まだ寝惚けているらしかった。
徐々にクリアになる思考。
そして、原因が隣の重みにあることに気付いた。
「何で…お前がいる」
答えは返ってこない。
左に頭を巡らせば、ちゃっかりイザークの腕を枕にして無邪気に眠る少年。
寝惚けて部屋を間違えたのだろうか…。
柔らかな栗色の髪は少し寝癖がついていた。
何となくそれが気に入らなくて撫でて直してやると、感触に気付いたのか、長い睫毛の下から紫の瞳を覗かせる。
しかし、すぐにそれは閉ざされた。
「おい。どけ。腕が痺れた」
言葉とは裏腹にそっと滑らかな頬に触れると、くすぐったそうに肩を震わせる。
起きるかと思えば、ぽふっとイザークの胸板に額をくっつけて小さく呟く。
「寒い」
「…俺で暖をとるな」
一気に力が抜けた。
ハァ、と溜息をつきながら、細い身体を抱き込む。
「早く起きろよ」
自分が冷たい冬ならば、キラは暖かな春だろう。
伝わる春のあたかさに引き込まれて、冬も眠りに落ちた。
「わーっ!イザークの馬鹿ぁ!!遅刻するじゃないかっ。何で起こしてくれなかったんだよ」
「…」
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