with ジュール家




つけられている。


そう思うのはけして間違い等ではないだろう。
振り返ると小さな子供がジッとイザークを見上げた。
白い猫耳フードから覗く紫の大きな瞳が愛らしい。

「なんだ?」
「キラキラ〜」
会話を成立させるのは無理なようだ。

早々に諦めて歩き出す。
イザークが一歩踏み出せば、子供は二歩。
しかし早く歩いているのになかなか引き離せない。
イザークの方が息切れして再び振り返ると子供は平然としている。

何なんだ一体。

訳の分からぬ恐怖を感じて思わず後退る。
「イザーク?」
母親の声にホッと力が抜けた。

「母上!」

駆け寄って腰に抱きつくとエザリアは驚いて目を丸くする。
仕事が忙しくベビーシッターに任せきり。
しかしイザークは寂しいなんて一言も言わないし、甘えてくる事もほとんどない。
そうすればエザリアが困るとわきまえている。
エザリアとしては助かる反面申し訳なく、また少し寂しいと思っていたりするのだが。

今日はようやく休みが取れて一緒にデパートへ買い物にきていた。
お手洗いに行くと言うイザークにエザリアがついて行こうとするとイザークは固く拒否した。
いつの間にか成長している息子に切なさを感じていた所だった。
ギュッと抱き着いてくるイザークの頭を撫でながら、原因と思われる子供に目を向ける。

マシュマロのように柔らかな肌とチョコレートのように甘く輝く髪。
紫色の大きな瞳は無垢そのもの。
エザリアと目が合うと子供は小さく首を傾げて「キラキラ〜」と花のような笑顔を見せた。
エザリアの鼻の奥がツンとした。

(何かしらこの可愛い子は!?)

「僕お名前は?」
「キラキラ〜」
名前じゃないわよねと思いながら、イザークを少し離してしゃがみこむ。
イザークはエザリアの肩にしがみついて母を取られまいとする。
イザークとしては不安に違いないがエザリアは顔が緩むのを抑えきれなかった。
「お母さんかお父さんは一緒じゃないの?」
エザリアがそう問うと子供はキョロキョロ辺りを見回した。
すぐに大きな声があがる。
「ままぁ」とか「ぱぱぁ」と叫びながらわんわん泣く。
イザークも驚いてびくりと震えた。
「あらあら、元気な声v…じゃなくて。はぐれてしまったのね…」
大丈夫よ、とエザリアがなだめても泣き止まない。
周囲の目もあってエザリアが弱り果てた時、イザークが子供の頭にポンと手を置いた。

「男が泣くな」

すると泣きじゃくっていた子供は歯をくいしばり泣きやんだ。
我慢しきれなかった涙は止まらないが。
ほら、とイザークが手を差し出すと子供はきょとんとしながら小さな手を乗せた。
その手をギュッと握りイザークはしっかりとした口調でエザリアに言った。
「迷子センターへ行きましょう」
「え?ええ、そうね」
エザリアの方が動揺してしまう。
子供の手をひいて、歩調を合わせ時折振り返って励ます。
ちゃんと【お兄ちゃん】してるのだ。
見ている内にエザリアも落ち着いて我が子の逞しさに微笑んだ。


嬉しくなって途中で売っていたアイスを買ってあげると言うとイザークは一つで良いと言う。
小さな子供は全部は食べきれないと思うから半分こで良いと。

「どれが良いんだ?」
「あおー」
「ミントはお前には無理だ。他のにしろ」
「ぴんく!」
「ストロベリーを1つお願いします」
子供が見えるように抱き上げてアイスを選ぶ光景にエザリアだけでなく、店員まで和んだようだ。
少し多めに入れられたアイスを受取り子供に渡す。
口の周りに付いたアイスを拭ってやりながら子供が残した溶けかけのアイスを食べるイザークを見て、
エザリアは弟か妹を作ってあげようかと真剣に考えていた。






迷子センターへ着くと子供の両親が先に来ていた。
「キラ!もうっ…心配したのよ」
子供の名前は『キラ』というらしい。
ではあれはやはり名前だったのか。
「キラキラ〜なの。きれいなの」
キラはイザークとエザリアを見て、うっとりとそう言った。
珍しい銀の髪に惹かれて両親の手を離れてしまったようだ。
頭を下げる両親に却って申し訳なく思った。



左手を母親に、右手を父親に引かれて帰るキラを見送る。
先ほどから静かなイザークに別れを悲しんでいるのかと窺えば、イザークは自分の掌をジッと見ていた。

「ちっちゃな手だった…」

エザリアはプッと吹き出して笑ってしまった。
イザークは何事かと見上げてくる。


エザリアはまだまだ小さな我が子の手を引いて帰った。

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